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東京地方裁判所 平成7年(特わ)3572号 判決

裁判所書記官

河上基也

本店所在地

埼玉県富士見市大字水子六六二番地七

株式会社デンセツ

(右代表者代表取締役 星野秀彦)

本籍

群馬県利根郡利根村大字大原一二四七番地

住居

埼玉県入間郡三芳町大字藤久保一六四番地一六

会社員(元会社役員)

星野三知夫

昭和二〇年六月五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官沖原史康、弁護人新穂均各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社デンセツを罰金一五〇〇万円に、被告人星野三知夫を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人星野三知夫に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社デンセツ(平成六年七月二七日以前の商号は株式会社星野電設。以下「被告会社」という)は、埼玉県富士見市大字水子六六二番地七(同年一二月五日以前は東京都練馬区土支田一丁目二番八号、同年七月三一日以前は同都練馬区早宮二丁目一五番一四号)に本店を置き、送配電線の架設工事等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人星野三知夫(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、被告会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空外注加工費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  同二年一二月一日から同三年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五二五九万五二八七円(別紙1(1)の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、同四年一月三一日、同都練馬区栄町二三番七号所在の所轄練馬東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が、一二九九万七七六六円で、これに対する法人税額が三八六万二五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成八年押第三二三号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一八七一万一七〇〇円と右申告税額との差額一四八四万九二〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  同三年一二月一日から同四年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九二二四万一六九〇円(別紙1(2)の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、同五年二月一日、前記練馬東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が、一七二九万五七八八円で、これに対する法人税額が五六〇万八一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三三七一万二八〇〇円と右申告税額との差額二八一〇万四七〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  同四年一二月一日から同五年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が七四六五万七五七一円(別紙1(3)の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、同六年一月二四日、前記練馬東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が、二二一一万一五五〇円で、これに対する法人税額が七一七万四六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二六八七万九四〇〇円と右申告税額との差額一九七〇万四八〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  吉野みね子、工藤吉郎及び中村敬の検察官に対する各供述調書

一  丸山健の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官作成の外注加工費調査書、賃金給料調査書、交際費調査書、交際費等の損金不算入額調査書、受取利息調査書、損金の額に算入した県民税利子割調査書及び事業税認定損調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書

一  川越税務署長作成の証明書

判示冒頭の事実について

一  登記官作成の登記簿謄本二通及び閉鎖登記簿謄本

判示第一、第二の事実について

一  小島和民の検察官に対する供述調書

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の通信費調査書及び雑収入調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成八年押第三二三号の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の機械特別償却費調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の機械特別償却費調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

2  被告人

判示各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、いずれも懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの。以下、同様)四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、送配電線の架設工事等を目的とする被告会社が、三事業年度にわたり合計六二〇〇万円余の法人税を免れた事案である。ほ脱税額は相当高額で、ほ脱率も通算約七九・〇パーセントと高率である上、その主たる手口は、架空の外注先業者の預金口座を開設した上、架空請求書の請求金額を右口座に振り込み架空外注加工費を計上するといったもので、誠に計画的かつ悪質である。また、脱税の動機をみても、被告人は、捜査段階においては、被告会社の簿外交際費等を捻出するために資金を蓄えておきたかったなどと述べており、公判廷においては、取引関係者等に対する貸付金を回収できなかったことからその穴埋めをする必要があったなどと述べているが、いずれにしても格別斟酌するに値しないものであって、これらの諸点からすると被告人及び被告会社の刑事責任は重いものというべきである。しかしながら、他方、被告会社はその後修正申告の上本件に関する本税等を分納中であること、被告人が本件各犯行を反省していること、被告人には、昭和四〇年代に、業務上過失傷害罪による罰金前科一犯及び道路交通法違反罪による懲役前科一犯があるのみで、それ以外には前科がないことなど、被告人及び被告会社のために酌むべき諸事情も認められる。そこで、当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮し、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金二〇〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 平木正洋)

別紙1(1)

修正損益計算書

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙1(2)

修正損益計算書

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙1(3)

修正損益計算書

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙2

ほ脱税額計算書

株式会社 デンセツ

〈省略〉

株式会社 デンセツ

〈省略〉

株式会社 デンセツ

〈省略〉

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